1.基礎作業 (1)周処『風土記』佚文データベース、及び『広弘明集』『辯正論』『法苑珠林』のデータベースを作成した。 (2)各国風土記の本文校訂を完成させ、電子テキストを作成した。 2.具体的考察 (1)『常陸国風土記』について、漢文としての誤用の出現、助辞の分布・対句の使用などから、『常陸国風土記』の多重性を明らかにした。六朝美文への傾斜が顕著な部分について、その表現の源泉となった漢籍・仏典を可能な限り明確にする調査を行い、『芸文類聚』『文選』をはじめこの時代愛読された王勃などの初唐の詩賦の表現を参照したことを明らかにした。周処『風土記』及び六朝地誌類について、諸文献から収集した佚文を基に、これらが『常陸国風土記』に及ぼした影響を明らかにした。 (2)『出雲国風土記』については、各郡の前半部と後半部の文体の相違、漢籍語の有無の差があることを明らかにした。従来、大宰府で同一人が編纂撰定したと見られていた『肥前国風土記』『豊後国風土記』について、両書の文体的特徴から、別人の手になる可能性が高いことを明らかにした。 (3)『万葉集』巻十六題詞・左注の文字表現について、助辞用法・漢文としての誤用・典拠の考察を行い、それを他の上代文献と比較対照し、巻十六の題詞・左注の表現が東宮侍講によってなされた可能性高いことを明らかにした。
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