本研究の目的は、室町(南北朝を含む)時代における飛鳥井家の人々の動静と和歌を中心とする文芸活動の研究である。特に飛鳥井雅縁・雅世父子を対象とするが、研究に際しては南北朝から室町前期における朝廷・幕府及び歌壇の動静を視野に収めながら、人物像を探り、作品の内容的考察や位置付けを行う必要がある。そのために、雅縁・雅世の文芸活動の全般に亙る作品を精査・整理すること、併せて関連資料の博捜・収集を目指すことが要求される。 雅縁・雅世の人物と文芸活動に関する主たる研究として、夙に昭和三十年代後半の井上宗雄氏の研究があり、昭和四十年代後半には田中新一氏の家集研究がある。近時に、有吉保氏の新資料の紹介と研究があり、筆者も「雅世集」の諸本、家集と『続撰吟抄』との関係等を論じた。 本研究の期間は、平成13・14年度の二年間である。13・14年度とも、年譜考証の基礎資料の整備に資するために、南北朝・室町前期の『吉田家日次記』、『教言卿記』、『満済准后日記』その他の古記録や歌会記録類を調査した。雅縁・雅世の人物や公武諸家との交友、官界・歌壇での動静に関する記事に注目し、その資料の収集・整理に取り組んで既存の基礎文献の補訂を試みた。同時に新資料の発掘にも努めて、予想以上の成果を上げ得た。 その結果、平成13年度の成果として、雅世を主体にした「飛鳥井雅世年譜稿(一)」(1〜25歳)を作成した(既発表)。平成14年度は継続の「飛鳥井雅世年譜稿(二)」(26〜40歳)を作成した(未発表)。また、家集『雅世集』と定数歌を整理し、「宋雅・雅世集」「雅世集I」「雅世集II」「雅世集III」「雅世卿百首」の本文及び校本を作成した。これらは、雅世全歌集・紀行・文事等を所収の『飛鳥井雅世全集 本文篇』(仮称、近年刊行予定)の一部を成すものであり、「平成14年度研究成果報告書」として刊行予定である。
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