今年度の研究目的である絵俳書や俳諧一枚摺の研究について、以下の研究実績を得た。 1.ぺりかん社刊行の『江戸文学』25で「特集 多色摺の歴史と俳諧一枚摺」の監修者となり、216ページの編集を行ない、「多色摺の歴史と俳諧一枚摺をめぐって」と「歳旦帳・絵俳書・多色摺絵俳書」の二篇を執筆した。後者では、とくに絵俳書・色摺絵俳書の歴史的な展開を具体的に詳細に述べた。またこの特集では、俳諧一枚摺を江戸文学の中に位置づけ、俳諧と絵画を結びつけて研究する必要性を強調した。 2.昨年入手した新出の蕪村の俳諧一枚摺を「蕪村の大黒天」と題して、『図書』に発表することができた。一枚摺の新出資料として研究者から注目され、一般読者にも蕪村の一枚摺のおもしろさを知ってもらうことができた。 3.明治期の俳諧一枚摺3点を「小林永濯の俳諧一枚摺」と題して、月報に発表することができた。これらには明治維新によってもたらされた汽車・新造の金貨・銀貨、洋服、ペン・インクなどが描かれており、新しい時代の様相を俳諧とともに示すことができた。 4.講演を2回行なった。日本近世文学会五十周年記念展(たばこと塩の博物館)2002年7月6日「芭蕉・蕪村-新出資料をめぐって-」と太田記念美術館土曜講座2002年10月26日「俳諧一枚摺の魅力」。蕪村の一枚摺の紹介、また具体的に十数点の一枚摺を示して、その魅力について述べた。 5.早大図書館の分館戸山図書館で架蔵の俳諧一枚摺10点を展示・公開した。 6.資料調査旅行で成果を得た。また若干の絵俳書(『たまひろひ』など)や俳諧一枚摺を収集することができた。
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