1、「源氏小鏡」の写本を伊井春樹氏は60本余り調査され、以下の結論を導かれた。 (1)本文は六系統に大別され、そのうち第二系統はさらに三種類に分けられる。 (2)江戸時代に刊行された整版は、第二系統に分類される。 整版が第二系統のどの類に属するかは、伊井氏は述べられていない。 2、そこで第二系統の写本をすべて閲覧して、本文を比較した結果、三類に分けられるほどの異同は見出せなかった。 3、次に整版は七種類あり、互いに対校したところ、次のことが判明した。 (1)どの版も同じ系統である。 (2)本文が最も良好であるのは、出版が最古の慶安四年版と、それと同版の無刊記版である。 4、写本と版本を校合すると、いずれも同一系統で、本文は版本の方が良いことが分かった。 5、「源氏小鏡」の第二系統は、影印も翻刻も刊行されていないので、本学所蔵の無刊記版を全文紹介し、解題を付け、平成13年度「親和国文」に発表した。
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