岡田八千代の研究は3年目に入る。これまで収集した資料の分類、さらには新たに発見した資料の収集と整理に時間を取られた。前年度は戯曲を中心に検討したが、本年度は劇評を中心に資料収集と検討をした。劇評の場合、具体的な舞台の状況も把握しなければならないために、多くの雑誌に当たり、劇評が書かれた当時の舞台写真を収集し、他の劇評にも目配りし、想像以上に時間が掛かった。したがって検討しながらの作業であったために研究成果の発表をまとめることが出来なかった。同時に八千代についてかかわりのあった劇作家や映画などの周辺の調査もした。特に秋元松代と小津安二郎について比較検討を試みた。 八千代が主催した女性劇作家の集まりで秋元松代と会っているために、秋元に何らかの影響がないかどうかを秋元のの作品を読み直して検討した。秋元の激しい情熱と八千代の激しさは共通するものがあるように推測された。今後の研究成果の発表でそれを明らかにしたい。 小津安二郎については、当時の演劇(新派)の演技を否定して、小津映画独特の演技(写実と小津は表現)を考えだした。八千代は新派や歌舞伎の劇評が多いために、当時の演技についてどのように評価していたか小津と比較することで検討を加えた。小津の演技に関する検討の成果は論文にすることが出来た。 これからの予定は研究が終了する来年度までに資料のデーターベース化を可能に出来るように努力することであり、同時に大量の劇評のコピーを取り、それに関する検討成果を論文にしたいと考えている。
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