本年度は、増上寺・姫路文学館(南天荘文庫)・ノートルダム清心女子大学附属図書館(正宗文庫・黒川文庫)・善田昌運堂・四天王寺国際仏教大学附属図書館(恩頼堂文庫)・天理大学附属天理図書館・宇野茶道美術館・高野山大学附属図書館・春日大社などに赴き、古筆切・古筆手鑑・古筆模写資料・散佚文献関連資料などを閲覧・調査・撮影した。結果、主に次のような成果を得ることができた。これらについては来年度も継続調査していきたい。 ・四天王寺国際仏教大学附属図書館恩頼堂文庫蔵『諸集漢序』の中に「良玉集序」を発見。『良玉集』は源顕仲撰の平安期散佚私撰集。これまで100首近くの佚文は収集されていたが、序文の存在はまったく知られていなかった。その内容から『良玉集』の性格の一端が窺え、のみならず顕昭に関する新たな伝記的事実も明らかになるという重要資料。 ・増上寺蔵において伝後伏見院筆広沢切『伏見院御集』断簡・伝後光厳院筆未詳私撰集断簡を調査・撮影。いずれもこれまでは不完全な翻刻でしか紹介されていなかった。京極派和歌研究の一助たり得る好資料。 ・宇野茶導美術館において良質の古筆コレクションを発見。古筆手鑑1帖・平安・鎌倉期書写の古筆切を中心とする掛け軸30点前後・伝頓阿筆『古今集』(完本)・伝足利義尚筆『古今集』(完本)など、いずれも学界未知の資料。 また昨年度見出した天理大学附属天理図書館蔵『類聚歌苑』残欠本について、本年度、より詳しく調査・考察し、10月に開催された和歌文学会49回大会(於香川大学)で発表した。間もなく活字化心される予定である。 ほか昨年度発表した「散佚歌集切集成 本文篇」の増補及び索引作成、古筆資料類のデータベースのデータ更新なども定期的に実施した。 なお本年度の研究活動に際しては、出光美術館学芸員の別府節子氏、鶴見大学非常勤講師の石澤一志氏、愛知大学短期大学部非常勤講師の日比野浩信氏に、研究協力者として当該研究への参加と、MOA美術館・増上寺などにおいての資料調査を依頼した。
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