中華人民共和国建国後の連環画(1950年代から2000年代まで)、あるいは「文化大革命」時期の少年児童向け連環画雑誌などを可能なかぎり収集し、データベース化の作業をおこなっている。 単行本としての連環画については、従来の収集も含めて、三千五百点ほどが集まった。これらを材料に、描かれた人物、その動作、持ち物、背景等、テキストおよび絵画の表現における一定の規範を解明すべく、個別の作品の読解を進めている。 「文化大革命」時期における連環画のプロパガンダの機能は重要である。連環画雑誌、特に当時の児童向け連環画画報型式の雑誌『紅小兵』は、同名誌が各地で刊行されていたものであり、従来「空白」と呼ばれていたこの時期の連環画や児童文学の状況を知るための、貴重な資料である。いわゆる連環画は、成人をも読者の対象としているが、これら児童誌に見える連環画をもあわせて考察することによって、この時期の連環画の歴史が、立体的に構築できるのではないかと期待される。こちらについても、目下、データベース化と読解とを進めている。 また、建国以降、ほぼ一定の型式を保ってきた連環画は、90年代になって、大きく変貌してきた。外国、特に日本の漫画表現の影響を受けて、内容、型式ともに、かつての「連環画」とはまったく別のものになっている。このあたりの変化の様相と原因を、さらに詳細に解明していく必要がある。 以上、今年度の研究によって、解明すべきいくつかの問題点が、明らかなってきた。今後は、さらに連環画および連環画雑誌の収集を進めるとともに、問題点を解明すべく、作品の読解を進めていく予定である。
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