中華人民共和国建国後の連環画を、特に60、70年代を中心に収集し、データベース化の作業をおこなった。全体の分析は今回の報告書等ではまだ形にすることはできないが、数年後には、連環画研究の第一歩を提示する予定である。個別のテーマがいくつか提示できる予定であるが、ここに箇条書きにしてみたい。 〔1〕コレクションでは、新刊書ではなく、使用済みの連環画が集まったために、そこから、文化大革命時期の図書館における、いわゆる「毒草」とされた書籍に対する処理など、読書論としても面白いテーマが提示された。 〔2〕連環画の多くを占めているのが、翻訳、翻案物であるが、特に50〜70年代のソビエトの児童文学作品・絵本を藍本としたものの分析は、興味深いものかある。 〔3〕同一作品で、版の異なるものについても、絵図およびテキストの異同について、興味深い結果が提示できそうである。たとえば、雷鋒をテーマにしたものについては、兵士の服装、頻繁に背景として掲げられる毛沢東図像の異同、などが揚げられる。また、二十世紀最後の数年からおびただしい量の「復刻版」連環画が刊行されたが、そのテキスト、図像には、多くの異同が見いだされ、復刻版としては使用に堪えないものであることが判明した。これは、今後の連環画研究者に対しても警告しておくべきことであろう。 〔4〕連環画雑誌については、『連環画報』『工農兵画報』のほか、文革時期の児童連環画『紅小兵』などが集まった。これらについては、目次の作成等の作業を進めている。
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