研究計画に従って、当該研究に必要な資料の収集と分析を行った。2001年度には30年代のカレンダーなどに登場する美人画、農民美術、社会主義リアリズムなどの要素が毛沢東様式に吸収されていく過程を探求した。2002年度には毛沢東様式の特色を明らかにし、後の現代アートでどのように引用され、変容していくかを明らかにした。また本研究の出発以前から、資生堂ギャラリー・水戸芸術館・NTTインターコミュニケーションセンター(ICC)とともに調査を進めていた「韓国光州ビエンナーレ2000」や北京の現代アート研究の成果は2001年度に公表することができた。また2002・2003年度には北京大学・中国社会科学院文学研究所の図書館で、建国以前については『時代画報』『婦人画報』、建国後では『中国婦女』『婦嬰衛生』『解放軍画報』『蘇聯』『蘇聯婦女』などのグラフ雑誌を閲覧、複写、収集することができた。その結果、30年代の都市文化の中での「モダン女性」が毛沢東様式では女性性を喪失し男性化した「鉄の娘」に変容することが図像を通して具体的になった。また現代アート・演劇・映画の中の毛沢東様式に関しても書籍・論文・視覚資料(VCD/DVD/CD)の収集、整理が行われた。しかしこれらの作業はやっとスタート地点に立ったという状況であり、今後より広範かつ詳細に進めていく必要がある。今後の課題は30年代以降の女性観を捉え、通史的な文化を叙述することにある。そこには政治的そして経済的な体制の変化や、大衆意識の変容が映し出されるだろう。
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