昨年9月には愛媛県保内町・城川町役場、高知県佐川町・高知市などを訪問して、県立図書館・町立図書館・町役場で『三旬程記』(明治六年)関係の資料を閲覧・筆録・複写して、明治初期の愛媛・高知の情況を調査した。11月には東京(国会図書館)、茨城県常陸太田市(市立図書館)、福島県いわき市(市役所)・相馬市(市立図書館)などを訪問して、『帰献録(松島記)』に関する資料を閲覧・蒐集した。相馬市では地元の研究会の会長などを務める先生方と知り合い、『帰献録(松島記)』や松川浦、錦織晩香のことなどについて談じ、資料集『複刻版松川詞藻』を入手した。このように、土地の研究者と知り合い、今後の資料交換などを約束し得たのは実に有意義で、これは現地訪問して始めて可能であった。12月中旬には宇和島市立図書館で上甲振洋の『三旬程記』を中心とした資料閲覧・蒐集を行った。「鳩ヶ谷鈴村家文書」所収の原本調査を行い、必要資料をコンピュータに打ち込んだり、デジタルカメラに撮ったりした。また「博多鈴村家文書」も調査し、「博多鈴村家文書」と「鳩ヶ谷鈴村家文書」との関係をも調査して、やっとこれまでの疑問に対する一応の解答を得た事は、大きな成果であった。ここでも地元の研究者と資料交換する機会があり、今後の研究に資する所が少なくなかった。同月下旬には岡山県総合文化センター(県立図書館)で、『入攝稿』の下津井・吉備に関する資料を閲覧・筆記・複写し、平成十一年に発表した「上甲振洋『入攝稿』訳注」(「内海文化研究紀要」第27号)の補訂作業を行った。このように、今年度は『三旬程記』を中心とした資料調査に各地へ出かけ、既発表論文の補訂作業も行うことができた。その成果の一部を「上甲振洋研究の資料(其の二)と『三旬程記』の翻刻」(80枚。「内海文化研究紀要」第32号3月発行予定)にまとめて初めて活字化し、今後の研究の基礎作業が完成した。
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