1.呉語処衢方言群(常山、江山、玉山、広豊四方言)の音韻データを方言間の音韻対応に基づき配列した基礎資料を作成した。この資料は声母、韻母、声調の三部分、158の表からなり、およそ1200語(異なり語数)を含む。この資料に基づき平成14年度における研究、すなわち音価の再構を進めることになる。平成13年度における研究の中心はこの作業であった。 2.平成14年2月17日〜平成14年2月23日に中国より趙日新氏(北京語言文化大学語言研究所・助教授)を勤務校へ招へいし、上記資料に関するレビューを受けた。語源の確定、方言層の処理法などに関して有益なアドバイスを受けることができた。また中国国内における呉語処衢方言の調査・研究状況に関する情報の提供も受け、本研究と同様の研究が中国国内では手つかずの状態にあることを確認した。 3.平成14年2月24日〜平成14年3月20日、中国浙江省(常山、江山)、江西省(玉山、広豊)に赴き上記資料おける疑問点に関する方言調査を行った。単独で発音された音形が得られていなかった語について単独音形(単字音)を聞き出すことが、今次調査の中心であったが、聞き出すことができなかった語も相当数残った。これらについては語中における音形をそのまま利用することになる。 4.研究の過程で執筆した論文「呉語処衢片的咸山攝三四等字」を香港中文大学発行の『中国語文研究』に発表した。呉語処衢方書に南方方言にかつて存在したはずの非常に古い音韻現象(咸山攝における二等an-三等ien-四等aenという区別)が存在することを明らかにすることがこの論文の目的である。
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