本年度は研究計画の如く、基礎資料のデータベース化を中心に行った。具体的には、『中原音韻』『中州楽府音韻類編』『中州音韻』『聚分韻略』『蒙古字韻』などの元代音の根本資料となるもので、ごく少数の僻字を除き、すでにユニコードによる電子テキスト化されている。未入力の僻字については当有は今昔文字鏡により入力する予定であったが、今昔文字鏡にすら収められていない文字であること力多く、また今昔文字鏡の印刷時の品質があまり高くないため、そのままになっている。それらの僻字はユニコードのエクステンションBにも収められていないようなもので、作字する方法も考えられるが、独自の外字コ」ドを使用することは将来のデータ公開時の汎用性を低くすることになるため、目下のところ僻字の処理は未解決である。そのため、先行資料との継承関係を跡付けたり、一字一字の収載字の音韻地位との関連づけをする段階にはまだ進めずにいる。また元曲の押韻字のデータベース化については『全元曲』の電子テキストを未入手のため、今年度は実施することができなかったが、来年度は既存の電子テキストの信愚性をチェックしつつ、押韻字の摘出・帰納を進める予定である。また、ペルシャ資料については明初のもので時代がやや下るがペルシャ医学書の漢訳に含まれる対差を摘出したが、まだ電子テキストとしては未入力で、やはり次年度にデータベース化をした上でその具体的音価と音韻体系に関する研究を行う。
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