研究課題
本研究で扱う民間巷間資料は、その整理方法そのものが従来の書誌学の領域を越えた新しい研究分野であり、その比較的大きなコレクションである風陵文庫は問題解決のための基礎となる資料である。しかし、そもそもの紙質・装丁が素朴なものであるので、民国時期の資料でも線装本であっても却って劣化が激しい。そこで、資料をマイクロフィルムに撮影し、見開き毎のJPEG画像としてファイル管理を行って容易に閲覧・研究する基盤を作っている。本年度は、風陵文庫俗曲部分(F400Z)について撮影を終わり、俗曲版本を系統的に管理するためのファイル名賦与を始めた。このファイル名賦与ならびにフォルダ管理には、多くの俗曲資料に応用できる体系を考えねばならない。次なる寶巻部分(F399)の版本構成をふまえながら、将来の俗曲データベースに向けて問題を洗い出しつつ作業を進めている。また、本研究では、本学所蔵風陵文庫そのものを核とした版本研究の他、他所蔵機関の俗曲コレクションとの比較、ならびに俗曲そのものの演唱形態の研究を並行して行うことで現存の庶民文化を反映する資料の多角的な分析を行っている。本年度は以下の調査を行った。(1)国内:京都大学人文科学研究所、天理大学図書館(2)台湾:中央研究院歴史語言研究所傅斯年図書館・台湾大学(3)イギリス:大英図書館(4)遼寧省蓋州影口承形態調査。欧州では従来の漢籍の所蔵に加え本研究が対象とする俗曲版本の所蔵が中国本土よりも多く、また刊行時期の早い貴重な資料が多い。二十世紀には鄭振鐸・柳存仁らが調査記録をのこしているが、現在閲覧した場合に往々にして現物との照合が難しい。今回の調査で得られたマイクロフィルムを元に、再検討を行いたい。特に、大英図書館には「宣講」の所蔵があり、早稲田大学風陵文庫所蔵資料との比較研究が期待される。
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