研究概要 |
国内においては、既にファクシミリ版やマイクロフィルムの形で出版されている劇テクストの分析を行った。また、イギリスおよびアメリカでの国際学会出席に合わせて、ブリティッシュー・ライブラリー(ロンドン)・ヴィクトリア&アルバート博物館内ナショナル・アート・ライブラリー(ロンドン)、フォールジャー・シェイクスピア・ライブラリー(ワシントン)において、現存する劇作家の原稿や上演用台本などのマニュスクリプトの分析調査を行った。その際、John Fletcher, The Honest Man's Fortune ; John Fletcher, The Woman's Prize ; Anon., Edmond Ironsideなどに見られる作者のト書きや、book-keeperが書き込んだ指示などから、エリザベス時代において上舞台、舞台裏の楽屋内、舞台の下、舞台上の周縁部(舞台奥のドアの付近や舞台の屋根を支える柱の蔭など)が演技のためにいかに使用されていたかを示唆する例を集めることができた。舞台上の周縁部が時として「舞台裏」として扱われていたことを検証する論文として、'Standing Aloof on the Shakespearean Stage' (Shakespearean Yearbook 3 (2002),掲載予定)を書いた。また上舞台に関わる問題としては、'Juliet's Descent from the Balcony : The Locale Change in Romeo and Juliet, 3.5'という表題の発表を演劇学会Scena Conference (St John's College, Cambridge, 2001)で行った。さらに、上述のテクスト分析により、'within'という用語が常に楽屋裏を指示しているとは限らないことが概ね明らかになったので、現在、それについての論文を執筆中である。
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