研究概要 |
この研究は、シェイクスピア時代の「演技の場」ないしは「舞台上」(onstage)の概念は、現代私たちが考えているよりもずっと広かったのではないか、という認識に基づき、当時の劇作家や俳優たちが「舞台上」として扱うことが可能だった場所の範囲を限定することを目指した。研究方法としては、当時書かれた劇作品の初期版本やマニュスクリプトを使用して、「舞台裏」が演技に使われた例を集めて分析するということを行った。こうした調査研究の結果、「舞台裏」を意味するト書きである'within'は、楽屋の内部を指示するばかりではなく、上部のバルコニーをも指示する可能性があることを立証することができた。ブリティッシュ・ライブラリー所蔵のマニュスクリプトの調査をした際、俳優が楽屋内部にとどまっていながらも、そこで演技をしている姿が観客に見えなければならない、という例があることを発見した。当時の劇場においては、「舞台裏」と「舞台上」の境界線がきわめて曖昧だった、ということ示す大変に重要な例である。こうした研究の成果を反映する論考として下の2点が挙げられる。 1.'Juliet's Descent from the Balcony : The Locale Change in Romeo and Juliet,3.5' 2.'"Maluolio within" : Acting on the Threshold between Onstage and Offstage Spaces'. これらの論文は、研究期間中にケンブリッジ大学聖ジョン学寮およびバーミンガム大学シェイクスピア研究所で開催された国際学会で発表した。
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