鈴木担当の語彙意味論からの付加詞の解析に関しては、典型的な項位置である動詞の直接目的語位置に生じる付加詞的要素について、集中的に検討を進めた。その結果、Way構文・フェイク目的語結果構文・同族目的語構文などにおける形式上の目的語は、典型的な項位置に生じているにもかかわらず、指示性や前置移動可能性、本来的な自動詞との共起可能性などにおいて、動詞の直接項としてではなく、むしろ副詞的、付加詞的なふるまいを示すことから、これらの要素は動詞の意味拡張により獲得される新たな独立項として捉えるよりも、通常の目的語名詞句の指示性を欠き、文主語とある種の指示上の依存関係を結ぶ述語的要素として機能していると分析すべきであることを明らかにした。具体的には事象構造を含む意味構造のレヴェルにおいて、出来事を測定する尺度としての機能を特定する必要があるが、詳細はさらに研究中である。 宮澤担当の(i)統語構造からLF表示への派生については、この写像に特別な内在的規則が不要であり、概念・意図のシステム体系の側からLF表示に対して課される条件の特性の反映として捉えることができるということを、ドイツ語やヒンディー語などで観察される虚辞のwh構文の分析を通して明らかにした。 次に、(ii)付加詞の移動についてであるが、付加詞とそれが付加する側の要素との関係は意味役割に基づくものでも選択に基づくものでもなく、よって、付加詞の統語構造への組み込みは、上記の写像の捉え方によると、早くてもLFへの写像時となる(従来の用語を使えば、LF部門内で行われる)。これにより、例えば付加詞内に発生するwh句が、wh-in-situと解釈される場合には文法的となるが、顕在的移動によって付加詞外へ移動しようとすると非文になる事実が自動的に説明される(なお、線形化の問題は研究中である。)
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