この研究の目的は、イギリスロマン派詩人・画家ウィリアム・ブレイクがその複合芸術作品において「自己愛」の概念をどのように描き出していったかを、十八世紀に展開されていた自己愛をめぐるディスコースに照らし合わせながら解明することである。 2年計画の初年度にあたる平成13年度には、十八世紀イギリスにおいて「自己愛」をめぐってどのようなディスコースが展開されていたかを探究した。とくに、「肉体」をキーワードにしながら「自己愛」概念に関する資料を収集した。「肉体」は十八世紀における「自己愛」の定義の中核におかれ、ドルバック卿やメアリ・ウルストンクラフトによると「肉体を保護しようとする自然の第一法則が自己愛」と認識されていたのである。 また、ブレイクの複合芸術作品における「自己愛」の表象の分析に取りかかる準備をすすめ、分析すべきブレイクの作品のページ数を特定して、それらのページをコンピュータに取り込む作業をほぼ終えた。これらのデジタル処理された作品を、収集した「自己愛」の概念の資料とつき合わせながら、ブレイクにおける「自己愛」の表象のありかたを考察することが、次年度(最終年度)に残された課題である。
|