初年度においては作品の電子化によるデータベースづくりを目指したが、同性愛演劇の範囲を狭くとるか広く取るかについて研究者自身に迷いが生じ、そのため各種文献や理論書等を検討し、また他研究機関の研究者の意見も聴取し、同性愛演劇を拡大解釈してデータ化したほうが適切であると判断した。また、初年度において完了するはずのデータベース化を次年度にまわし、データベース化に必要な資料収集の範囲を拡大し、資料収集に時間をかけると同時に、一挙に予定よりもふえた資料の整理を、初年度に集中的におこうなうことに予定を変更した。この資料をもとに2年目においてデータベース化をはかることとし、そのための機器の整備ならびに方法や手順について十分検討し準備することとした。 理論的考察としては、初年度は可能な限り関連領域の資料を渉猟することを目的として、同性愛文学、同性愛文化、英国演劇史、日本の近代演劇、日本近代における文化言説などを考察の対象とした。そして、この方面においても、資料収集をおこないつつ、有効な方法を検討した。その段階で、英国的文化研究の方法の有効性を確認することになり、近代文化を同性愛的文化としてみるような視座を設定する準備を整えた。 なお現段階では資料と理論的考察は平行関係にあり有機的な連携を実現していないが、作品のデータベース化の進行とともに理論的考察と関係付ける予定。そのための準備は初年度において完了した。
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