平成14年度は初年度において遅れていたデータベース作成作業を続行した。その際、英国中世演劇から現代演劇までを可能な限り網羅するデータベースを目指したが、アイルランド演劇を加えるべきかを検討し、最終的に加えることを決定したが、そのために考慮すべき作品が予想外に多いことも判明し、データベース作成が今年度中に完成しなかった。またスコットランド演劇などマイナーなローカルジャンルの問題も浮上したため、関連した資料を追加購入した。これと並行して、すでに初年度から開始し、今年度本格化する予定であった理論的根拠の検討作業ならびに日本文化における演劇とその影響の研究を本格化した。研究課題の達成のためには、歴史的資料の収集と考察だけでは不十分で、研究を進める根拠と、研究の意義につての考察が不可欠であった。すなわち非同性愛的演劇作品に同性愛的要素をどのように確認するのか。英国演劇の日本の演劇のみならず日本文化への隠れた影響をどのように確定するのか。同性愛性の定義とその意義をどのように確定するのか。こうした問題を、理論的文献を収集し整理しながら考察し、新研究分野としても独立しうるような概念的枠組みの構想へと前進しえた。日本文化と日本演劇については、範囲が広いため、網羅的調査研究は短期間では不可能であるため、重要な拠点となるような時代あるいは作品を洗い出し、研究の焦点となるべきものを選別する作業を行なった。この作業はまだ十分ではなく、完了にいたっていないが、最終年度における、データの比較検討と分析作業の準備となりうる段階には到達したとみなしうる。
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