平成15度は、世界文学会年次大会において、シンポジウム「戦争と平和の文学」に参加し、「ネイティヴ・アメリカンと第二次大戦」という題目で、口頭発表を行った。第二次世界大戦で戦争後遺症に罹った主人公を中心に、戦争の意味と、アメリカ社会および部族社会において混血のインディアンであることの意味を、現代の状況と照らし合わせながら論じた。 この発表を発展させた論文「『儀式におけるCultural Hybridization(文化的融合作用)」が、学会誌「世界文学」に収録され、刊行された。これはネイティヴ・アメリカン文学研究への一つの貢献であり、『儀式』の作者レスリー・M・シルコウの作品分析とし新たな見解を提示したものである。 雑誌「國文学」8月号の巻頭エッセイに、「『作者の死』-口承のネイティヴ・アメリカン文学」というタイトルで寄稿し、ポスト・モダニズムの「作者の死」という考えかたが、ヨーロッパ中心思想からの発想であることを指摘し、今日の日本の外国文学研究の状況が、異常なまでに欧米崇拝に傾いていることに警告を発した。 このように、作品分析を通して今日におけるネイティヴ・アメリカン文学の評価へ向けて成果を挙げることができた。
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