本年度は、3年間の研究期聞の第2年度であり、以下の1-3の作業を継続し、発展させた。 1 アーノルド・ジョージ=エリオット、ディズレイリ、トロロープなどの小説、評論等に加えて、スコットやディケンズらの作品テクストから、イギリス文学に現われたアイルランド(人)像(ステレオタイブ)を探り出し、分析を行った。また、モーガン夫人、トマス=ムア、レ=ファニュ、プーシコーら、主に、文芸復興運動以前の作家の作品テクストから、アイルランド文学に現われたアイルランド(人)像(自己像)を探り出し、同様に、分析を行った。同一作家の中でのその像の変化、作家間での共通点・相違点を、整理し比較・検討した。 2 19世紀イギリス/アイルランドの文化史、政治、社会史に関する研究書・資料を合わせて読むことにより、反植民地主義や国民国家形成の動きの中で、アイルランドの自己像とステレオタイプ、「ナショナリズム」とアイデンティティーを、多面的に、事実に即して把握することをめざした。 3 1と2の作業を総合的・立体的に検討した。フランス革命やユナイテッド・アイリッシュメンの蜂起.世紀半ばの大飢饉や、その後の、フィニアンなどによる独立運動、それらが及ぼす影響にも、特に留意した。 なお、本年度は13年度と比較して、アイルルランド文学に現われたアイルランド(人)像(自己像)に、より一層重点が置かれた。さらに加えて、4 パーネルらの独立運動やアイルランド文芸復興運動に関する、テクスト分析(グレゴリイ夫人、W.B.イェーツ、J.M.シングら)および研究資料の調査を行った。
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