昨年度に引き続き、ブランウェル・ブロンテの初期作品のうち、アングリア物語全体の流れの中で重要な位置を占める「侵略戦争」('An Historical Narrative of the War of Encroachment'および'An Historical Narrative of the War of Aggression')を取り上げた。先に取り上げた「若者たちの歴史」('The History of the Young Men')、またすでに論考した「イギリス人からの手紙」('Letters from an Englishman')によって、ブランウェルの散文による初期作品のうちの最初期の主だったものについての考察は終了した。これらの研究成果は、2002年11月7日にニュー・サウス・ウェールズ大学(シドニー)で開催されたブロンテ初期作品学会での口頭発表の原稿と共に研究科成果報告書にまとめる予定である。 本年度はもう一つの研究テーマとして挙げていた「明治期におけるブロンテ受容」に関してもいくつかの成果を上げた。イギリス・ブロンテ協会が年3回発行する学会誌Bronte Studies(第27巻第2号)に論文が掲載された他、国内においても研究社『英語青年』(7月号、8月号)に論文が連載された。この関係では日本ブロンテ脇会の主催する公開講座での講演(2002年5月11日、近畿大学)を行った。 著書としては『イギリス小説とインテリア』における第7章「鏡で読み解く『ヴィレット』」が脱稿し、近々にミネルヴァ書房(京都)から出版される運びとなった。さらに、ニュー・サウス・ウェールズ大学教授と共同研究で進めてきたシャーロット・ブロンテの「へぼ詩人」('The Poetaster')の編集作業がようやく完成し、出版の準備に入った。
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