入手が困難な禁酒小説を当該期間内に相当数収集することができた。国内外の図書館での資料収集の成果と考えている。それらの資料の一部については、すでに共著書、論文で発表ずみであり、近々刊行される予定のT・S・アーサー『酒場での十夜』の拙訳と解説においても十分活用される予定である。 また、これも年内刊行予定の拙著は『飲酒/禁酒の物語学』の題名のもと、本研究成果を広く世に問う書物となるはずである。 また、『新世紀アメリカ文学史』という教科書を編集したが、このテキストは11個のキーワードを選び、それらの視点からアメリカ文学を読み解くという画期的なものだが、私自身も、「酔いどれアメリカ文学」という項を担当し、アメリカ文学と酒との関係について解説するとともに、あわせて関連するハリエット・ストウのテキストに解説と注釈を施した。まもなく出版される英米文学入門書でも、同様な立場からアメリカ文学と酒の関わりを詳細に論じたが、教科書と研究書の性格を併せ持つこれらの書物の出版を通じて、本研究の成果が広く社会に還元できたものと信じている。
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