研究概要 |
今年度(平成14年度)は、昨年度から引き続いて行っているHenry Jamesの二つの大作The Portrait of a LadyとThe Golden Bowlをめぐるグローバリゼーシヨンの多角的な研究を、学会発表や論文によって更に深化させた。まずThe Portrait of a Ladyについては、昨年5月の日本英文学会全国大会での発表で、Jamesが、ヒロインのIsabelを当時の領土拡張する帝国主義的なアメリカのイメージと重ね合せて描くことで、,世界を舞台にした拡張主義である帝国主義というグローバリゼーションの大きな特徴を鮮やかに描き出している点を明らかにした。ただ、この研究を論文にまとめるに際しては、A.NegriとM.HardtのEmpireを始めとする最近のグローバリゼーション研究の急激な変容を消化、吸収する必要があり、こうした最新の批評理論をふまえたThe Portrait of a Lady論の活字化を急いでいる。また、この小説は、帝国主義とは全く対照的な、異文化志向のコスモポリタニズムというグローバリゼーションの別の側面をも、Isabelの夫でクレオールのOsmondを通して同時に描き出しており、この点に着目した研究成果は、昨年10月に刊行された『ドラマティック・アメリカ』に掲載した。次に、The Golden Bowlについては、昨年10月の日本アメリカ文学会での発表で、この小説が、グローバリゼーションのまた別の側面、即ち、様々な国や文化や階級の境界がなし崩しになって入り交じるinternationalizationの動きを描き、その動きがアメリカ人やユダヤ人などのplutocratsの金という権力によっていかに弾力に押し進められてゆくかを、物語の中心人物のMaggieとAmerigoの国際結婚の顛末を通して強烈に前景化している点を明らかにした。
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