本研究は、平成13年度から平成15年度にかけての3年間、19世紀末から20世紀にかけての世紀転換期のグローバリゼーションの諸相を同時代のアメリカ文学の作品を通して考察したものである。グローバリゼーション研究は社会学や経済学政治学、更には文学研究など様々な領域において最近10年間ほどの間に隆盛になったが、現代社会や現代文学を議論の中心に置くことが多かった。本研究は、グローバルな現代社会の原型は100年前の世紀転換期に培われたという立場から、こうした現代寄りのグローバリゼーションの議論を100年前の世紀転換期の社会とアメリカ文学に応用し、当時のアメリカの代表的な小説家でコスモポリタンを自認していたHenry Jamesの諸作品を通じて、当時のグローバリゼーションの諸特徴を明らかにした。具体的にいえば、国境を超えた世界の一体化と大きく定義づけられるグローバリゼーション現象の大きな原動力が資本主義であることや、そうした資本主義が支配するグローバリゼーションとは全く別の形のグローバリゼーションを異種混交の開かれたコスモポリタニズムの典型としてのクレオール文化が表していることなどを、Jamesの代表的な諸作品を分析しながら考察した。更に、9・11テロ以降「グローバリゼーション」研究から「グローバリゼーション」をふまえた上での「(アメリカ)帝国」研究へと批評が大きく推移しつつある動向と連動しながら、グローバリゼーションと帝国主義との関係にも着目し、様々な国家や文化の共存を促進するとともに多国間、多文化間の序列化、主従関係をも生むグローバリゼーションの特質にまで考察を深めた。
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