(1)カリブ文化/文学研究集会を立ち上げることが、交付申請時の重要な目標であったが、平成13年9月の第一回から平成15年12月の第十回まで、毎回平均二十名の参加者を得ることかできた。会費も会則もないゆるやかなサークルにしたこと、東京と関西で交互に開いたこと、講演や研究発表の内容を文学だけでなく歴史、社会、宗教、音楽、映画等、多様を心がけたことも良い結果につながり、多彩な顔ぶれによる充実した討論の場となった。これを基に、『カリブの風--英語圏文学とその周辺』(編者・風呂本)という書物の出版を企画したところ、有志23名が論文、コラム、書誌を寄稿した。平成15年11月に出版助成を申請、平成16年4月に交付内定があり、現在印刷中である。 (2)個人としてはおもに、西アフリカの信仰とヨーロッパのキリスト教の混淆から生じた、カリブ文化の「異種構造」の典型的現象とも言えるクレオール宗教について調べた。今も受け継がれているこの信仰が、カリブ海地域の人々の生活にいかなる役割をもっているのか、またそれはポスト・コロニアル世代のカリブ系女性作家たちの文学にどのように表象されているのか、さらにそのような手法と"magical realism"との差異はどこにあるのか、といった新しいテーマがこの調査から生まれ、すでにこの方向での研究に着手している。
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