本研究計画遂行の2年目にあたり、新刊の関係研究書を購入するとともに、初年度に入手した17世紀英国の政治・宗教関連文献の考察、整理を行った。特に今年度は、重要な考察対象である宗教詩人ヘンリー・ヴォーンについて、その作品を宗教・思想的脈絡の中で読解し、注釈を施すことを行い、『光と詩と-ヘンリー・ヴォーン詩集(読解と注釈)』という学術図書の形で中間成果発表するために、原稿を完成し、科学研究費補助金(研究成果公開促進費)交付の申請を行った。アンドリュー・マーヴェル研究に関しては、昨年度に引き続いて、さらなる実績をあげることができた。すなわち、拙論"Interpreting Nature's Mystic Book : Marvell's 'Upon Appleton House'"の中で、「神の摂理」の言説は寓意画的表象を構築することに役立つが、「偶然」の要素は、寓意画的表象を脱構築する働きを持っており、マーヴェル作品は、この二つの方向性を内包していることを指摘し、神学的言説と文学表象との連動性を明らかにする基礎を作ったと考えている。さらに今年度も、宗教・政治的観点からの考察をマーヴェルの「バミューダ諸島」分析のために行い、昨年度オックスフォード大学ボドリアン図書館で得た1653年8月22日の日付のあるエドワード・ハイドの手紙文を引用して、この年の夏、クロムウェルの共和国における外交政策が反オランダ政策から反スペイン政策への移行期にあったことを指摘した。この成果は、英文学における国際的学術雑誌であるNotes and Queries誌に掲載されて世に問われることになった。
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