19世紀前半期における天文学上の主な発見や成果について、またそれらが当時のアメリカ文化の時代思潮に及ぼした影響について文献資料の収集・講読・分析を行なった。具体的には、以下のような研究の取り組みを実施し、その成果となるものを大学内の学術誌に公表した。 1.アメリカの科学史や科学思想史の文献資料から天文学関係の部分を抽出し、当時の天文学上の発見や業績等について調査した。 2.つぎに当時の合衆国の主要な文人・文化人たちの作品や伝記等を参照し、天文現象や天文学に関する描写や言及を抽出し、検討していった。具体的にはつぎの作家と作品を主な対象とした。エマスン:『エッセイ集』、ソロー:「ウオールデン」と「月」、ポー「短編小説集」と「ユリーカ」、ホイットマン『草の葉』。 3.1と2の調査・研究をつき合わせ、この時代のアメリカ文化思潮における代表的な文人たちの宇宙への意識や宇宙観について概観し、その成果を論文にまとめあげた。なおその際に、現代の我々が抱いている一般的な宇宙観との比較検討も行い、両者の共通点と相違点についても大づかみに指摘した。 4.また、ソローの作品「月」は、ソローの夜の散策と自然や天体の観察を主な内容とするエッセイであり、今回の研究に深い関わりを持つものであるので、作品全体を翻訳し、やはり学術誌に公表した。
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