前年度にひき続き、19世紀前半期における天文学上の主な発見や成果を検討し、それらが当時のアメリカ文化・文学の思潮に及ぼした影響を考察、追求した。具体的には、以下のような研究の取り組みを実施した。 1.科学史や科学思想史の文献資料から天文学関係の部分を抽出し、19世紀当時の発見や業績について講読、調査した。 2.当時の合衆国の文人たちの中からヘンリー・ソローを選び、ソローの代表作『ウオールデン』を中心に、ソローの宇宙や天文学に関する言及を抽出し、この方面における彼の意識を追求した。その結果、それらが彼の人生上の悟りの表現に使用され、かつ他者に対して人生の見直しを提唱する際にも比喩的に活用されていることが判明した。 3.現代人の一般的な宇宙観も検討し、ソローの場合と比較した。ソローが人間を宇宙の中心的な存在と見なしたのに対し、現代人は人間を宇宙の周辺にいる孤児と受けとめているという。この様な両者の決定的な見解の相違を指摘した。 4.以上の成果を集約し、論文として大学の紀要に発表した。
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