本年度は、特に疑問文と否定文に焦点をあて、節タイプのマーキングの手段としてどのような統語構造を仮定するのが妥当であるかを、従来の分析を批判しながら解明した。また、これにより、比較統語論的観点から、節タイブと否定文の構造が普遍文法理論に対しどのような制約を課すのかを明かにした。 具体的には、補文構造、節タイプ、否定文構造に関連する文献を整理し、間接疑問文と否定対極表現を中心とした基礎資料の収集と作成を行った。そして、基礎資料に基づき従来の分析を批判的に検討し、間接疑問文の倒置に関する問題(稲田)と否定文の統語構造に関する問題(西岡)を考察し、これらの問題を解決する文法モデルをそれぞれ提案した。それぞれの成果の一部は日本英語学会等で口頭発表し、裏面に記載した雑誌に発表した。また、日本英語学会に出席した折に今西典子氏(東京大学)、大津由紀雄氏(慶慮大学)と個人面談し(稲田)、研究成果について意見を聞いた。さらに、日本語に関する理論的問題を考察するために星宏人氏(ロンドン大学)を招聘し、最新の理論的研究の成果を聴くとともに本問題に関する我々の研究に対するコメントをもらい本問題に関して議論した。また、米国に行きNorvin Richards氏(MIT)、Howard Lasnik氏(コネクチカット大学)、久野障氏(ハーバード大学)と個人面談を行い(西岡)、研究成果についてコメント、批判をもらい本問題を議論した。 今後、稲田、西岡が別個に行った調査、研究をつきあわせるとともに、CP構造としてどのようなものが妥当であるかを総合的に判断するために命令文、感嘆文等に関する研究をすすめ、最適な文法モデルを提案する予定である。
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