研究概要 |
1.ピューリタニズムの変容を、ディキンスンを中心にして捉えるために、彼女の難解な詩を正確に読むことは当然として、ディキンスンの主要な書簡を訳出することが大事と考え、翻訳をしてきた。それらはディキンスンが詩作の指導を仰いだボストンの評論家のT.W.Higginsonへの手紙、ディキンスンの親友であった新聞社の主筆Samuel Bowlesへの手紙、マサチューセッツ最高裁判事Otis Lordへの手紙、それに身内や友人たちへの手紙である。 2.我が国においては研究書の翻訳が少ないことに鑑み、最も標準的なディキンスン研究書であるPaul Ferlazzo, Emily Dickinson(Twayne)の翻訳を開始し、紀要等に発表した。これは2004年中に上梓予定である。 3.ディキンスンと同時代のニューイングランドの作家たちについて研究を進めているが、まずHawthorneの幻の処女作と言われるFanshaweについて、そのアメリカ的ピューリタニズムの側面について小論を発表した。 4.同じくニューイングランド出身の作家Henry Jamesの有名な"The Turn of the Screw"の幽霊像を詳細に点検し、そこに見られる抑圧された性とピューリタニズムとの関連について、小論を発表した。 5.ディキンスンの父が理事をしていた当時のアマースト大学で学んだ内村鑑三の留学時代のカリキュラムなどを点検し、当時の教育が自然科学を重視する反面、キリスト教の信仰を重んずる宗教的な色彩の強いものであったこと、それらがディキンスンの教育と重なるものであること等を確認した。
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