研究課題
基盤研究(C)
まず、英国のモダニズム作家D.H.ロレンスがオーストラリアでの滞在をもとに書いた『カンガルー』(1923)と、英米を舞台としたロレンスの中編小説『セント・モア』(1925)の群衆表象を比較再検討した。その結果、『セント・モア』においては復讐心と群衆の可能性が閉ざされていることがわかった。次に、ウォルター・ベン・マイケルズのネイティヴィスト・モダニズムという概念を参照しつつ、『セント・モア』におけるアジア表象の意味と機能を分析した。「アジアの中心」はタタール地方である可能性が高いこと、また、この悪が極めてグローバルな性質を持つことから、『セント・モア』は、アメリカの黄禍に対する恐怖を、ヨーロッパの汎モンゴル主義に対する恐怖へと重ね合わせて表象したテクストと見なしうることも明らかになった。しかし、悪の表象を吟味してみると、不可思議な悪の根源としての「アジアの中心」という表象は、明確なシニフィエを持たないままテクスト内で浮遊する過剰なシニフィアンとなっていると言えることも判明した。最後に、『セント・モア』と『羽毛の蛇』(1926)を、ミシェル・フーコーやジル・ドウルーズの著作を参照しながら、ナチズムや帝国主義の観点から比較検討した。その結果、『セント・モア』はマイケルズが考える以上にネイティヴィスト・モダニズム、すなわち、反帝国主義的排外主義の傾向が強いこと、ならびに、『羽毛の蛇』はナチズムに通じる要素と同時に、反帝国主義的側面を持つテクストであることがわかった。
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『英語青年』2005年5月号 151・2
ページ: 20-21
D.H.Lawrence : Literature, History, Culture (Tokyo : Kokushokankoukai Press)
The Rising Generation 151-2
D.H.Lawrence : Literature, History, Culture(Tokyo : Kokushokankoukai Press.)
女子大文学(英語学英米文学篇) 5
ページ: 55-67
Joshidai Bungaku : Journal of English Studies 5
Kanazawa English Studies 24
ページ: 91-103
女子大文学(英語学英米文学篇) 4
ページ: 17-31
Joshidai Bungaku : Journal of English Studies 4