本年度は、夏の三カ月間をイギリス・ヨーク大学で研修し、メアリ・.ロウスのソネット連作集『パンフィリアからアムフィラントスへ』の訳出と注解・解説の執筆、サー・フィリップ・シドニーの詩集の訳出、そしてデイヴッド・ロッジ『現代小説の諸様式』の訳出に従事した。 メアリ・ロウスの連作ソネット集については、福岡女子大学文学部紀要『文藝と思想』第67号に、「『パンフィリアカラアムフィラントスへ』--翻訳・注解・解説」として、400字原稿用紙第300枚を一挙に掲載した。これは初めての日本語全訳であり、とりわけ、若い研究者の方々には資するところがあるだろうと自負している。 シドニーの全詩集については、鹿児島大学名誉教授大塚定徳氏と共訳で出版する予定で、目下、平成15年度学術図書出版助成金を申請中である。 ロッジの文学理論書については、大阪大学大学院玉井 章教授との共訳書として、今年の夏頃には松柏社から出版される予定である。この翻訳書は、フォルマリズムの立場から、メアリ・ロウス研究に役立つと思われる。 最大の懸案であるロウス作の長編ロマンス作品『モントゴメリ夫人のユレイニア』については、少しずつ解読作業を進めてはいるが、大変長く難解な作品であるがゆえに、読了までにはまだ時間がかかりそうである。
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