1.レディ・メアリ・ロウスの連作恋愛詩集『パンフィリアからアンフィランサスへ』の本邦初訳・注解・解説を発表し、その方面の専門家の方々から賛同を得た。関西の17世紀を専門とする研究家グループが毎月1回実施している読書会で、この詩集を輪読しているが、参照していただいている。 また、この翻訳を元にして、日本英文学会九州支部大会で「シドニーとメアリ」という演題で発表し、聴衆と質疑応答を行い、再考の機会を与えられた。 その成果の一つとして、「イギリス17世紀前半の文学に見られる女性表象--メアリ・ロウス『パンフィリアからアンフィランサスへ』」という論文を執筆した。この論文では、イギリスの女性が初めて書いて出版した連作恋愛詩集の内容と構造について論じた。従来の男性詩人たちの伝統的な歌い方とは違う、女性の視点から女性主人公の内的な恋の苦悶に焦点をあて、恋愛における女性の立場を歌った詩集として評価した。また、日本ではまだメアリ・ロウスに関する論文が少ないことから鑑み、他の研究者たちの便宜を図るため、詳しい注解と参照文献を付けた。 2.シドニーについては、処女作とされる「五月祭の佳人」の本邦初訳・注解・解説と、「『オールド・アーケイディア』詩集(抄)」の本邦初訳を発表した。これにより、シドニー的歌い方とメアリ・ロウス的歌い方との類似と相違を検討する土台が出来たと思われる。 3.昨今の文学研究には、たとえかなり昔に書かれた作品を論じる場合であろうと、文学批評理論の修得が必須とされている。デイヴィッド・ロッジ『現代文学の諸類型--メタファーとメトニミー』及びジョナサン・カラー『記号の追跡』は、文学記号論の立場から理論的に文学作品や文学の制度について分析・論究している文学批評書である。これらの二書を日本語に翻訳・出版し、それを基盤にして、<語りの問題)について考えている。 4.今年の12月には、「17世紀英文学会西支部研究会」において、メアリ・ロウスとシドニーについて発表する予定である。
|