フォークナー関係の研究書に加えて、アメリカ南部女性作家、ネイティヴ・アメリカン女性作家、アフリカン・アメリカン女性作家、フェミニズム批評、多文化主義などをめぐる研究書を収集・購入し、主にフォークナー小説に登場する女性表象について研究を進めた。 2002年5月には、九州アメリカ文学会大会特別講演に招かれ、「削除キーの功罪-アメリカ文学における忘却」と題する講演を行なった。この講演においては、フォークナーの女性人物の記憶と忘却願望と、トニ・モリスンの女奴隷人物の忘却願望を中心に、ミラン・クンデラの女性の記憶と消滅への恐怖、ソール・ベロウの人物のユダヤの記憶の削除などをも絡めて論じた。 また、10月には、日本アメリカ文学会全国大会シンポジウムにおいて、「橋を渡ってみるならば…トニ・モリスンとルイーズ・アードリックの"the Beyond"」と題する発表を行なった。これは直接、フォークナー研究に含まれる論考ではないが、現在アメリカで活躍中の女性作家の女性のボディ表象からフォークナーの女性表象へと発展できる筈である。 以上2本の口頭発表は、すでに紀要などで出版され、「フォークナーの女性表象」研究は幅を広げつつ、着実に進んでいる。 さらに、2000年10月にフランスの国際シンポジウムで発表した原稿がフランスのフォークナー研究誌 Etudes Faulkneriennesに掲載された。
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