「フォークナーの女性表象」というタイトルの著書を準備するにあたり、2003年度は、おそらく著書の中心的課題となるであろう女性人物、Light in AugustのJoanna Burdenのセクシュアリティについて考察した。すでにJoanna Burdenについて書かれた先行研究は多数あり、それらの精読を行い、私がどの新しい点を重点的に論じるのかを明らかにした。 それは、Light in Augustに登場するもう1人の女性Lena GroveとJoanna Burdenがこれまで対照的な陰陽の関係として捉えられてきたことへの限界を証明することとなった。つまり、2人の女性人物は対比的に描かれているのではなく、またお互いを相補的に支える関係でさえなく、2人は同じ方向を向いた双子的存在として読みとれることを、Julia Kristevaの"abjection"理論を援用しながら論じた。論文は、「Joanna Burdenの遺書---Light in Augustにおける<アブジェクシオン>」として発表された。 一方では、アフリカ系作家やネイティヴ・アメリカン作家と主流文化との<境界線>の問題、女性とマイノリティの記憶の問題を引き続き考察しており、夏8月には、ハーヴァード大学図書館および、ニューヨーク市立図書館、ハーレムにあるショーンバーグ図書館で、関係書類の調査を行った。
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