2001年〜2003年にかけて、全国規模の学会シンポジウム3回、招待特別講演4回において、フォークナーとトニ・モリスン、ルイーズ・アードリックらマイノリティ作家における女性表象、記憶/忘却、境界の問題を論じた。2001年度は、マイノリティ作家が形作る<アメリカ>性、およびフォークナーの白人女性人物と黒人女性人物のセクシュアリティの重なり合いについてシンポジウムなどで議論を展開した。2002年度は、歴史と記憶/忘却を主たるテーマとして、フォークナーの女性表象を、マイノリティさらにユダヤ系作家などの民族的記憶の問題と絡めて論じた。2003年度は、トニ・モリスン、ルイーズ・アードリックなどマイノリティの作家たちの女性表象を考察しつつ、フォークナーの女性人物で極めてユニークな存在感を誇るLight in AugustのJoanna BurdenとLena Groveの重なり合いについて論証した。 また、ハーヴァード大学図書館およびニューヨーク市立図書館、ハーレムのショーンバーグ図書館において、フォークナー関係、アフリカ系作家関係の資料調査を行い、論文のテーマに発展させた。その間、フェミニズム批評、ポスト・コロニアル批評、多文化主義批評などから大きな刺激を受けたが、その成果は、合計8本の論文として内外の学術雑誌、研究誌、大学紀要などに発表された。 現在、「フォークナーの女性表象---マイノリティの<アメリカ>」と題する著書を準備中であり、すでに、250ページほどの分量がすでに完成し論文のかたちで出版されている。
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