narrow syntax、叙述理論と、認知・思考システムとの相互関係から判読可能性条件(legibility condition)について考察した。narrow syntaxにより構築された構造がTRANSFERによってΣに送られ、そこでそれに叙述解釈が施され叙述に関する意味表示がSEMインターフェイスに生成される。この「叙述」の意味に対応する認知システム側の対応物として、二つの可能性が考えられることが分かった。まず、「概念階層における上位・下位関係」である。いわゆる概念に、上位(superordinate)・基本(basic)・下位(subordinate)範疇が存在する。一般に、叙述における述部は概念上主語より上位にあると考えられる。例えば、Fido is a dog./A dog is an animal.つまり、概念間の上位・下位関係が叙述という言語関係の根底にあると考えるのである。叙述はこのような概念間の上位・下位関係を表すための言語手段であると言ってもよい。第二に、Brentano(1973)による三つの心的活動のなかにjudgmentがある。このjudgmentは、categorical judgmentとthetic judgmentに分けられる。前者は、概略、the act of setting up an object in one's mindとthe act of affirming and denying the predicate of that subjectから成るとされる(Kuroda 1972)。このcategorical judgmentが、認知システムに属するものとすると、まさに言語における叙述に対応するものであると考えられる。
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