研究概要 |
本年度は研究代表者および分担者が各々独自に米国で現地調査を行い、以下のような研究実績をあげた。 まずサトウ・ゲイルは、ハワイで複数の作家にインタヴューするとともに、今日ハワイで見出される、地域に密着した多文化的書きものに関する資料収集を行った。インタヴューした日系女性作家は、Gail Harada、Marie Hara、Mavis Hara、Juliet Kono等であり、他にも、Eric Chock, Darrell Lum, Wing Tek Lum, GaryPak, Nora Okja Keller, Cathy Song, Lee Tonouchi, Jon Wat等、日系外の作家たちにもインタヴューした。収集した資料は、ハワイのネイティヴ作家、および、ハワイを出身地とするアジア系作家の詩、小説、エッセイなどである。また、ネイティヴのハワイ人およびアジア系の移民文学に関する文化批評書も収集した。 小林富久子は、2001年8月から10月まで、カリフォルニア大学バークレー校のエスニック・スタディーズ学部に訪問研究員として滞在、主として同大のエスニック・スタデイーズ学部の図書館で日系女性作家に関して多様な資料を収集。また、2002年の2月には、UCLAのアジア系アメリカ研究センターを訪問、資料収集を行った。さらに同時期、ロスアンジェルス在住の日系女性作家ヒサエ・ヤマモトを自宅に訪問し、インタヴューを行った。その他、2度の滞在中話を聞いた芸術家、研究者には、Elaine Kim, Sao-ling Wong, Trinh T. Minh-ha, Yong-Soon Min等が含まれる。 平石妙子は、今年度、本研究を進めていくための予備的作業を主として行った。2世の日系女性作家のなかでもいち早く、異人種間の恋愛や結婚問題をテーマと深くかかわらせて描いたヒサエ・ヤマモトが黒人新聞の記者として働いていた時代に書かれたものを検討した。夏に行ったカリフォルニア大学ロサンゼルス校の調査では、同校の図書館に収めれている『ロサンゼルストリビューン』を、ヤマモトの記者時代に絞って検討し、戦争直後の日系人と黒人との関係や、マイノリティにたいする根強い人種主義を批判するヤマモトの鋭い視点を通してヤマモトの新たな側面を把握することができた。さらに、ヤマモトと同様に日系女性作家を代表するワカコ・ヤマウチが10月に来日した際には、これまでの創作活動や作家としての立場などを伺う機会があり、ほぼ同時代を生きたきたヤマモトとの比較庁する際の示唆を様々に与えられた。
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