研究概要 |
交付された科学研究費補助金「基盤C一般(2001年、2002年)」に基づく実績は、たとえば、「中世英国写本と僧院」という研究テーマにしたがって、イギリスとフランスの縁の地を訪れ、とりわけカルトージオ派の母院であるグランド・シャルトルーズ修道院辺の実見踏査、写真による現地の記録、出版物やマイクロフィルムをはじめとする関連資料の入手、等々、多数の成果はあるが、最大の成果と実績は研究成果の一端を出版物として公にしたことである。15世紀前半に英国はヨークシャーのカルトージオ派修道院Mount Grace Priory(ヘンリー八世の修道院解体政策のため1539年以来廃墟となっている)においてニコラス・ラヴ(Nicholas Love, d.1424)によって作成されたMyrrour of the Blessed Lyf of Jesu Christ(『イエス・キリストの祝福されし生涯の鏡』、早稲田大学図書館蔵、NE3691)のルーツをたどりながら、世界に散在残存する50を越える同種写本との比較考証を行ないながら、同書に含まれる「土曜日の章」の校訂本,"Saturday" in Waseda MS(NE3691)(A4版、pp.xviii+36,早稲田写本からの5葉とエジンバラのスコットランド国立図書館写本からの2葉を含むカラー写真20枚、早稲田大学事業部、2003年02月25日)を研究出版した。この書は「金曜日の章」(1999)、「サクラメントの章」(2000)に次ぐ3巻目の出版物となる研究書である。資金不足の関係から、成果の一端しか公表できなかったことは心残りであるが、これは機会をとらえての将来の実践目標にする。
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