研究概要 |
(1)中英語による異界夢文学の邦訳等 研究期間中に中英語による異界夢文学の翻訳を行った。邦訳を行ったのは、主としてThe Vision of Paul, St.Patrick's Purgatory,そしてThe Vision of Tundaleである。この内、後者2作品については、研究報告書(冊子)に全訳を掲載した。この2作品は中世の夢文学を代表する作品であり、共通する内容を有することから、中世庶民の異界に対する観念を把握することができた。邦訳作業を進めるうえで、特に、気がついたことは上記作品と聖書記述との関連である。両者の関連は、邦訳の註に指摘した。今後は、更に他の作品の研究を継続し、聖書(聖典、外典、偽典)との関連を調査する予定である。 (2)研究報告書作成及び学会口頭発表 研究報告書作成に及んで、13年度、イギリス大英博物館やオックスフォード大学のボドレイアン図書館等で行った異界研究書の調査、ならびに関連する諸写本における図像の掲載状況の調査結果をまとめた。また、図像の35mmスライドフィルムを海外より入手し、邦訳した作品の記述との比較検討を試みた。特に図像との比較は、文献のみでは理解が及ばない色彩や異界のイメージを視覚的に把握するのに役立ち、記述内容のより深い理解に役立った。 また、研究成果の一部を勤務校の研究紀要に掲載し、更に、平成15年5月には、日本英文学会の全国大会にて口頭発表(題目:夢文学2作品の楽園描写における'joye'について)を行った。発表後、フロアから貴重な質問や助言を得ることができ、今後の研究に生かしたいと思う。
|