研究課題/領域番号 |
13610603
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塚本 昌則 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (90242081)
|
研究分担者 |
辻部 大介 福岡大学, 人文学部, 専任講師 (30313183)
中地 義和 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50188942)
田村 毅 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (90011379)
|
キーワード | 眠り / 夢 / ヴァレリー / 散文詩 / 断章 / ロートレアモン / レリス / シュルレアリスム |
研究概要 |
本研究は、入眠から夢をへて目覚めにいたる眠りのさまざまな側面が、ロマン主義以降のフランス文学においてどのような役割を果たしてきたかを検討するものである。今年度の研究活動においては、夢と文学との関係を中心に、以下の諸点に関して成果が得られた。 1.19世紀の詩人ロートレアモンが、夢の形成力をどのように作品の中に取り込んでいったかを分析した(研究協力者・原大地)。この詩人が、夢と読書との類似関係に着目し、それを最大限活かしながら自らの詩学を確立していったことが明らかとなった。 2.シュルレアリストたちは「夢の万能」を標榜したが、その中でもとりわけ夢を自らの文学活動に取り込もうとしたミシェル・レリスの詩学を検討した(研究協力者・本田貴久)。レリスの作品においては、半覚半醒の状態が重要な役割を果たしており、覚醒した意識と夢の中の意識のせめぎ合いが、テクストを産み出す大きなモチーフとなっている。 3.20世紀の詩人ヴァレリーは、覚醒した意識と眠りの中の意識との緊張関係を極限にまで押し進めることで、独自の夢の詩学を構築しようと試みた。そのなかでも、覚醒時の言語とは異なる夢の言語のあり方を分析し、夢の言語を自らの詩的言語に取り入れようとした試みを検討した(塚本:2002年10月23日、成均館大学校(ソウル)で開催された国際研究集会で、「夢の言語、イメージの言語」と題して発表)。また、ヴァレリーの専門家であるクレルモン=フェラン大学のロバート・ピッケリング教授に、目覚めを主題とした散文詩と、ヴァレリー自身が描いたデッサンとの関係についての研究発表を依頼した(2002年12月2日、東京大学)。 全体に、「夢」が、それをみている限りでは覚醒した意識のひとつのあり方であることが、数多くの作家たちの注意を引いたことが明らかとなった。眠りは、覚醒時の意識との関係においてこそ問題とされているのである。
|