研究課題
基盤研究(C)
三浦がフランスの「共和国」モデルに関心をもつきっかけになったのは、1989年のイスラム・スカーフ事件に端を発する「ライシテ論争」である。ライシテとは非宗教性と訳しうる政教分離のフランス的形態のことで、国家と公立学校を宗教に関して中立化することによって、私的領域における宗教の自由を保障する宗教共存の原理である。フランスのライシテは公的空間における宗教的民族的帰属の表現を容認する多文化主義とは対立する共和国的統合原理と密接に結びついており、差異にもとづく多文化主義的市民権に対立する普遍主義的市民権の基底をなす。しかし1968年五月革命以後の後期近代、特に1989年の冷戦終焉後のグローバル化時代にあって、近代国民国家の典型とされてきたフランスの「単一不可分の共和国」モデルは、次第にその臨界状態に達し、ナショナル・アイデンティティの揺らぎを経験している。本研究ではほんらい多言語・多文化国家であるフランスが、いかにして言語的・文化的多様性を一元化し、均質なナショナル共同体をつくりあげたかを分析し、アメリカなどアングロサクソン系の移民社会における多文化主義の浸透になぜ神経質になっているかを明らかにしようとした。フランスの「共和国」モデル、アメリカの「多文化主義」に対して、カリブ海の奴隷制植民地に生まれた「クレオール」についても、普遍性・差異・多様性の三角形のなかでその可能性を論究した。
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『ことばと社会』三元社 別冊1
ページ: 100-113
Kotoba to Shakai(Sangensha) Special Number 1
中央大学『仏語仏文学研究』 92号
ページ: 121-171
中央大学人文科学研究所編『民族問題とアイデンティティ』
ページ: 121-175
Ethnicity and Identitity, Chuo U.Institute of Human Sciences
Chuo U.Journal of French Studies No.92