1.マラルメと同時代のジャーナリズムとの関係におけるアンケート回答の位置づけ:マラルメのテクストのうちで従来周縁的なものとされてきたアンケート回答の意義を確認したうえで、この種の短いテクストの独特の性格を、一方ではインタヴューとの対比で、他方では詩作品や本格的な論説文との対比で明確に規定した。 2.マラルメのアンケート回答のテクスト研究:マラルメのアンケート回答のテクストについては、そのプレオリジナルの蒐集に鋭意つとめてきたが、ゴードン・ミランやベルトラン・マルシャルによる最新の刊本によって、その底本の確定にかんしては、残念ながら、もはや新たな寄与の余地がないことが明らかになった。ただ、アンケート回答というテクストの固有な性格である「間テクスト性」をよりいっそう浮き彫りにするという重要な作業はまだ残されているので、現在、その存在が判明している30余篇のテクストのひとつひとつについて、追加すべき情報や二次的データを補足していった。 3.<偶然性>の問題:マラルメのアンケート回答は1880年代後半以降、つまり詩人の<後期>に集中している。この時期の彼の文筆活動の全体をあらためて概観してみると、他に時評の連載、講演、インタヴュー、さらにいわゆる「折りふしの詩句」の制作といった、これまでに見られなかったジャンルにおいて活発な営為があったことが分かる。マラルメは<絶対>をめざして生涯<偶然性>と戦いつづけた詩人とされてきたが、ここには<偶然性>との新たな対処の仕方、すなわち<偶然性>との和解とでも呼ぶべき事態が起きているように推測される。
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