本研究は3つの局面を有している。第1は、ブランデンブルク・プロイセンの地域研究であり、第2は、この地域の少数民族研究であり、第3は、この地域の自然及び少数民族を描いた自然詩研究である。これら3局面を密接に関連付けて、学際的な研究を目指している。 平成14年度は、前年度に引き続き、この3局面(地域研究・少数民族研究・自然詩研究)に関する資料・文献の収集・整理・読解を行なった。特に、ブランデンブルク・プロイセンの内、プロイセンの地域研究・民族研究に比重を移し、これに加えて、プロイセン地域の自然詩研究(具体的にはBobrowski、Loerke)を行なった。 Bobrowskiを研究する際には、リトアニア・ポーランドのユダヤ人問題をも考察した。従来、リトアニア・ポーランド地域におけるユダヤ人虐殺は、ナチス・ドイツの命令と実行によって行なわれたとされてきた。これは歴史資料からも裏付けられることであり、戦後の言説は、もっぱら、ナチス批判の傾向を有していた。ドイツ詩においても、ユダヤ人の形象はナチスによって大量虐殺されるというものに終始し、場合によっては記号化されることもあった。しかし、最近になって、ポーランドの歴史研究者によって、ナチス占領時代のユダヤ人虐殺のある部分は、ナチス・ドイツによってではなく、ポーランド人の指揮と実行によってなされたということが、歴史資料から明らかにされるようになった。その結果、ステレオタイプ化されたユダヤ人の形象と歴史の実際のなかでのユダヤ人との間に差異があることが分かった。 一方、Loerkeを出発点にするドイツ現代自然詩の系譜に関して、国内の諸研究者と研究交流を行なった。「ドイツ現代自然詩」をテーマにした本を計画し、各研究者の分担執筆というかたちで、執筆に取り掛かった。
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