研究概要 |
13世紀初頭にオーストリアのバッサウで成立したと言われるニーベルンゲンリート(Nibelungenlied)に関しては、叙事詩の内容を描いた壁画・岩絵、翻訳書に添えられている挿画など、数多くの図像作品がある。中高ドイツ語の原典(主に写本Bと写本C)の内容と、各種図像資料に描かれていく人物や事物を比較対照して、データベースを構築し、研究成果を公表することを目的として研究を推進してきた。平成13年と14年の夏に科研費(外国旅費)によって渡欧し、ドイツ・オーストリア・ハンガリー・ノルウェー・スウェーデンの美術館や市庁舎、教会歴史博物館等に於いて、デジタルカメラやビデオカメラを用いて当叙事詩関係の各種図像資料を撮影した。13年度はミュンヒェンのニーベルンゲン絵画館でS.カロルスフェルトの手になる大壁画や、精巧なニーベルンゲン絵皿を撮影し、新設されたヴォルムスのニーベルンゲン博物館でハイテク資料を録画し、ロルシュの市庁舎で関係壁画を撮影した。またニーベルンゲン記念公園のあるペッヒラルンではF.クナップ氏より教えを受けた。平成14年度は改装なったベルリンの旧国立美術館でE.エーヴァルトの手になるニーベルンゲン伝説の、壁画の撮影、オスロでのニーベルンゲン伝説彫刻作品の撮影調査、スウェーデンのセーダーマンラントではシグルド伝説の11世紀岩面画とルーン文字の撮影調査を行った。フランスのメスでは、ハゲネ関係の伝説調査を行った。文献資料はバイエルン州立図書館・パッサウ図書館、フランクフルトのシュテーデル美術館、エステルゴムの王宮美術館等で収集した。約3千枚のデジタル写真、20数時間に及ぶ映像の整理を行い、写本の復刻版や校訂本を用いて、固有名詞に関する表記法と図像との関連性を研究し,特にクリエムヒルトに関する論文を執筆した。原典詩節と図像を対照並記し解説を加えた研究の中間報告書を執筆している。
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