本年度は4年計画の研究の初年度であるから、発表よりは基礎研究を先行させ、研究全体の揺るぎない輪郭と深度を確定することに費やした。依頼されていた京大・文学部の集中講義(平成13年9月10日一14日)のテーマに本研究のテーマを採用し、研究ノート7冊を作成して、実質30時間の講義を行うことによって、このテーマの概要を確定できたとおもう。しかしそのことによって発表誌締め切り(九月末)に間に合わなくなり、具体的な研究成果が得られていないことは残念である。 そのノートのタイトルは「強迫神経症」、「ヒステリー」、「享受(ジュイッサンス)」、「ラカン」、「作品分析I」、「作品分析II」、「作品分析III」である。各ノートの細目を挙げればそれだけで、このスペースを満たしてしまうので割愛する。 本年度の理論的な成果を二つ挙げると、 1)カフカは典型的なメランコリーの症状を呈しているが、それは強迫神経症と深い関係があることがわかり、フロイトの「喪とメランコリー」の論文が、充分に生かせるようになったこと。 2)カフカにおける欲動の昇華の問題をラカンのジュイッサンス(享受)の概念を用いて分析できるようになったこと。が挙げられる。
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