本研究は、現代ドイツ語の成立を、社会史的、社会言語学的視点から、その出発点である近世社会の状況との関連において論じようとするものである。 近世から現代に至るドイツ語の歴史的発展をみると、その特徴的な点は、話し言葉的性格から書き言葉的性格への傾向を強めたことにあるが、これは近世社会において、文書によるコミュニケーションが重要な役割を果たすようになった為であると考えられる。従って、近世社会におけるコミュニケーション状況を社会史、社会言語学の視点から解明することが主要な課題となる。 本年度は、1)近世ドイツの社会と言語に関する文献を収集し、データーを整理した。 2)近世ドイツ語の例として、ルターを対象とし、彼の言語、文体、言語使用に関して分析を行い、その成果を日本ドイツ文学会機関紙『ドイツ文学』国際版Neue Beitrage zur Germansitik Bd.1に発表した。 3)日本学術振興会日独科学協力事業セミナー開催費を得て、2003年3月、マタイアー教授とともにハイデルベルク大学で日独の研究者14名、英国、ロシアの研究者2名を招待し、セミナー「言語変化と社会変化-現代ドイツ語の根源」を開催した。 4)2002年8月、北京で開催されたアジア地区ゲルマニスト会議において比喩表現について全体講演を行った。
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