研究概要 |
本研究は現代ドイツ語の成立を社会言語学的視点からその出発点である近世社会の状況との関連において論じようとするものである。 近世から現代に至るドイツ語の歴史的発展をみると、その特徴的な点は話し言葉的性格から書き言葉的性格への傾向を強めたことにある。これは近世社会において文書によるコミュニケーションが重要な役割を果たすようになった為であると考えられる。従って、近世社会におけるコミュニケーション状況を社会史、社会言語学の視点から解明することが主要な課題となる。 本年度は、1)Justus G.Schottel、Johann Chr.Gottsched等の著作を分析して、近世ドイツ社会における言語規範意識の一端を解明することを試みた。近世ドイツでは当時の政治状況を反映して方言が乱立していたところから、文書のドイツ語が規範とされていたことが明らかになった。その際、ルターやエックなどの思想家や文芸家/文法家などの書き言葉、官庁の公文書の文体などの影響力が大きかったと推測される。 2)Martin Luther, Johann Eck, Hans Sachsなどの文体を分析、比較した結果、当時の識字状況を反映して、文書のドイツ語は耳で聞いても理解可能な簡潔な文体のものである傾向が認められた。 3)日本学術振興会日独科学協力事業により2003年3月マタイアー教授とともにハイデルベルク大学で開催したセミナー「言語変化と社会変化-現代ドイツ語の根源」の参加者の発表を論文集にまとめ、ミュンヒェンのiudicium社から出版することとした。
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