研究概要 |
18世紀における言語状況を「社会語用論的」に把握する目的で,高田はAdelungの『ドイツ語辞典』(1793-1801年)(CDROM版を利用)のなかの「丁寧さ」という概念を抽出し,「上品さ」と「親密さ」との関わりにおいて,当時の教養市民層の礼節観を辞書記述から再構成することを試みた.森澤は,都市言語と官庁語の関係をさぐるにあたり,2001年夏のドイツでの資料調査に基づき,今後数多くの資料にあたって調査を行う際に重要となるポイントをまとめ,競合する関係代名詞のひとつで,元来は官庁体特有といわれるものが,16世紀における様々な社会グループに属する書き手のテキストにどのように分布するか,という点を中心に調査を進めた.中川は,ドイツ・マンハイムにあるドイツ語研究所のコーパス検索プログラムCOSMASIを用い,社会言語学に応用可能な語彙頻度の暦順変化やコロケーション分析,さらには演算子と正規表現を活用したメタレベルからの言語学的検索など,ドイツ語学研究に寄与しうるより高度な使用法を考案した.この研究は,次年度で展開を予定している質的なドイツ語研究との融合の基盤となるものである.阿部は,同一文筆家のテクスト種による統語論における相違の解明を目標とし資料収集を始め,17世紀後半に完全な枠構造使用が飛躍的に増加することを考え合わせ,調査対象とする時代を17世紀にまで発展的に変更・拡大し,2002年2月に資料収集を行った.試験的調査からは,枠構造の急増が認められた後の18世紀において,例えばLessing(1729-81)やGellert(1715-69)での方が,枠構造浸透以前よりもテクスト種による差異がより明確であるという兆候が認められた.
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